【長崎・上五島】若松島の「キリシタン洞窟」。船でしか行けない聖地を訪れました

こんにちは、つたちこです。
上五島(中通島)中心にまわる旅のテーマは「隠れキリシタンの里を訪ねる旅」。
この旅の個人的ハイライトでもある「キリシタン洞窟(キリシタンワンド)」に行ってきました。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)とは

キリシタン洞窟は、船でしか行けない場所にあります。
ここは、キリスト教迫害によって逃げ出した信者が、隠れて生活していた場所なんだそうです。

若松島の里ノ浦のキリシタンは、明治初めの五島崩れの際、迫害を避けて船でしか行けない険しい断崖の洞窟に隠れたが、焚き火の煙を船に見つけられて捕縛され拷問を受けた。この洞窟は後にキリシタンワンドとよばれ、1967年入口に十字架と3mのキリスト像が設けられた。

キリシタン洞窟 | 観光 | 【公式】新上五島町観光なび

ここに隠れていたのは、3家族12人。約4か月もの間、洞窟で暮らしていたのだそうです。
ですが、冬に煮炊きをするための火から出たわずかな煙で、通りかかった船に見つかってしまい、棄教させるためのひどい拷問を受けたとのこと。

江戸時代だけでなく、明治時代にまでキリスト教迫害が続いていたというのは、五島への旅行について調べて、初めて知った事実でした。

その後、ここで信仰を守ろうとした人たちをしのび、1967年(昭和42年)に平和キリスト像が建てられました。
今でも毎年11月に、この場所でミサをおこなっているのだそうです。

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キリシタン洞窟への行き方と予約方法、費用

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)

そんな「見つかりにくい場所」にあるキリシタン洞窟は、船でしか行けない場所にあります。
陸から行けないというのは、隠れ家としては、絶妙の場所ですね。

なので当然、我々が訪れるにも、船でないと行けません

個人的に行く場合は、小型船をチャーターして連れて行ってもらいます。
前日までに電話予約が必要ですが、時間はこちらの都合に合わせてもらうことができます。
予約先はこちらの3か所です。

  • せと志お 0959-46-2020
  • 明日香  0959-46-3631
  • 祥福丸  0959-44-1762

料金は、2名までは8,000円、3名以上の場合は一人あたり3,000円です。

予約先、料金は2018年4月現在の情報です。上五島町観光協会の最新情報をご確認ください。
http://shinkamigoto.nagasaki-tabinet.com/detail/index_1098.html

どの船が良いのか、違いなどは正直わからなかったので、一番上にあった「せと志お」さんに電話してみました。
13時出航でお願いしたところ、無事予約できました。
※予約の電話は、日程の3週間ほど前にかけました。

船のチャーター以外にも、現地ツアーに参加してキリシタン洞窟に行くことも可能です。
調べたところ、いくつか日帰りツアーがありました。

日本遺産「国境の島」~上五島編~「せと志お」で海中公園クルージング
http://meguritabi.nagasaki-tabinet.com/tour/detail.php?tid=12

五島列島キリシタンクルーズ(上五島発)
http://meguritabi.nagasaki-tabinet.com/tour/detail.php?tid=29

五島列島キリシタンクルーズ(福江発)
http://meguritabi.nagasaki-tabinet.com/tour/detail.php?tid=30

私たちは、時間に融通を利かせたいのと、行きたいところだけに絞ってゆっくり回りたかったこともあり、個人で船をチャーターしました。
ツアーのほうが、効率的&安上がりで、いろいろなところを回れるかもしれません。
※ツアーについては、各ツアーの紹介で詳細をご確認ください。
※ツアーの場合、上陸はせずに船上からの見学のみのようです。

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いざ、キリシタン洞窟へ

当日は、午前中に頭ヶ島教会など、ほかの教会を見学してから、時間に間に合うように車で移動しました。

船に乗る場所は「若松港」。
中通島の隣にある、若松島にある港です。
中通島から若松島へは、若松大橋でつながっていて車で移動ができます。

この日の午前中に見学した「頭ヶ島天主堂」からだと、若松港までは40km弱の移動。車で約1時間強かかります。

道が混雑することはないですが、リアス式海岸沿いのくねくね道を走るので、スピードはあまり出せません。
時間に余裕をもって移動するのをおすすめします。

若松港に、船で迎えに来てくれました

予約した13時の少し前に若松港に到着し、港そばの駐車場(無料)に車を停めます。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)にいくために若松港にきました
若松港も水がとてもきれい!

さて、いったいここから、どこに行けばいいんだろう……。
特に「受付」みたいな場所はなさそうです。
港にも船の影はなく、ひと気もほとんどありません。

港でぼんやりしていると、遠くから一隻の船がやってくるのが見えました。
小ぶりの漁船みたいな感じです。
あ、もしかして、あれかな? 「せと志お」って船に書いてある!
どんどん近づいてきて、船着き場に停まりました。

船の中から、日に焼けたおじさんが顔を出し、声をかけられました。
「つたちこ(仮)さん? キリシタン洞窟の予約した」
「そうですそうです! よろしくお願いします!」

無事に「せと志お」さんと会うことができました。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)にいく船
無事、「せと志お」号と出会えました。

予定より早いですが、個人チャーターでほかに乗る人もいないので、とっとと出航することになりました。

早速船に乗り込みます。
特に救命胴衣などをつけたり、といったことはありませんでした。

船には腰掛けられそうなところがいくつかあるので、好みの場所に陣取ります。
「寒いと操縦室の中に入ってもらうんだけど、今日はあったかいから!」
とのこと。

いざ出港。
港を出ると、徐々にスピードアップ。
先ほど車で通った若松大橋の下をくぐり、どんどん南下していきます。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)にいく道中
若松大橋の下をくぐり、南下します。

しばし船旅を楽しみます。
旅行に行ったのは11月下旬でしたが、この日は晴れていて気温も高く、とても穏やかな日でした。
船は思っていたよりスピードが出ます。風は強いのですが、なかなかの気持ちよさ。
でも、もし気温が低かったら、外で風に当たり続けるのはツライものがあったかもしれません(その場合は操縦室に入れてもらえると思いますが)。いい天気でよかった。

穏やかな海で、透明感があって美しい。
緑色の島々の間を抜けるようにして、船が進んでいきます。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)へいく道中
とにかく、水がとてもきれいなのです。見とれてしまう。

波の向こうにキリシタン洞窟!

出航から10分ほどたつと、船長さんが声をかけてきました。

「あれが『ハリのメンド』ですよ。『メンド』っていうのは『穴』っていう意味で、針の穴みたいな形してるでしょ。キリスト様を抱いたマリア様に見えるとも言われてますよ」
おお、観光案内付きです。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)のそば、ハリのメンド
「ハリのメンド」と呼ばれる岸壁の穴。

切り立った岸壁に縦長の穴が開いているのが見えます。
たしかに、針の穴みたい。布をかぶった人のシルエットに見えなくもない……?
残念ながら私には「マリア様」には見えませんでしたが、信仰深い人にはそう見えるのかもしれません。

さらに船は進みます。
「ハリのメンド」をぐるりと回りこむように進むと、いよいよキリシタン洞窟が見えてきました。

船はスピードを落として、ゆっくりと進みます。
岩の上に建てられた、十字架とキリスト像が見えてきました。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)が見えてきました
いよいよ、キリシタン洞窟が見えてきました

あれがキリシタン洞窟。

この時、キリシタン洞窟には先客がいて、別のツアーと思われるみなさんが、ちょうど船から上陸しているところでした。15人ほどと、結構な人数がいます。

上陸できる場所は限られているらしく、先客が上陸し終わるまで、こちらは沖で待機です。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)
先客が上陸して、キリスト像に向かっています。

先客が全員岩場に移ったところで、船が移動し、私たちも上陸します。
特に乗船場のようなものがあるわけではなく、少し平らになった岩場に船の舳先をくっつけて、飛び移るスタイルです。
うわ、ちょっと怖い。

かなりぎゅーっと船を岩場につけてくれるので、「少し段差の高い階段」くらいな時もあるのですが、波のタイミングによっては1mくらいの高さになるときもあります。
タイミングを見計らって飛び降ります。

私たちは70代の母も一緒だったので、母の手を取って「せーの!」でなんとか降りてもらいました。
はらはらしました……。
上陸した後は、船はいったん離れて、沖で待機してくれます。

岩登り、そして洞窟の中へ

無事に上陸した後、岩場を歩いていきます。
比較的平らなところを選んで歩くのですが、道として整備してあるわけではないので、足元はがたがたで、上り下りも激しいです。靴はスニーカー推奨です。

十字架の近くまで行くには、岩の上に登る必要があります。ここがまた難所。
階段はもちろん、手すりなどもないので、軽いロッククライミングみたいな状況になりました。
母の手を引きつつ、なんとか岩の上まで登ります。

上に登ると、十字架とキリスト像はとても近くに見られました。
おおきい。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)
近くで見上げると、とてもおおきい。真っ白で、なんだか気が引き締まります。

先客のみなさんは、年配の方が多いせいか、ここで引き返す方がほとんどです。
ですが、この洞窟、奥まで行くことができるんだそう。
私たちが乗った「せと志お」の船長さんが「洞窟の奥まで行けるし、横穴から出てこられるよ」と教えてくれました。

足場がものすごく悪いので、さすがに母には行かせられません。
母にはこの場で待っていてもらい、私と夫の2名で洞窟の中まで降りてみました。

ゴロゴロと転がっている大きな岩の上を渡るようにして、洞窟に入っていきます。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)に降ります
大きな石の向こうに洞窟があるのです

中は昼間でも薄暗く、岩に囲まれた独特の雰囲気。
もちろん生活していた痕跡はもう残っていません。
波に乗って流れてきたプラスチックごみのようなものが、岩の間にいくつも転がっていました。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)の中に入りました
洞窟に降りて振り返ったところ。
キリシタン洞窟(キリシタンワンド)の中の様子
奥には、縦長の光が見えます。

この洞窟に、迫害されて逃げてきて、生活していた人たちがいるのだと思うと、なんとも感慨深い。

隠れキリシタン迫害をテーマにした映画「Silence」にも洞窟に隠れるシーンがありましたが、この岩場だらけの場所で寝泊まりして、食事をして……というのは、本当につらかったろうな。
しかも12人という結構な人数で、狭い洞窟の中で、4か月も。
それでも逃げるためにはやむを得なかったのでしょう。

結果的には、ここに暮らしていた人たちは見つかり捕まってしまうわけですが、波が打ち寄せるこの場所に逃げるほど切迫していた隠れキリシタンのこと想像すると、なんとも切なくなります。

洞窟は、T字型になっていて、途中で横に曲がれます。
ここが先ほど、「せと志お」の船長さんが教えてくれた横穴ですね。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)の中の様子
三角の光が見える横穴を進みます。
キリシタン洞窟(キリシタンワンド)の中の様子
岩のサイズはこんな感じ。大きな岩だらけです。

曲がった先をひたすら進んでいくと、その先に明かりが。
天井はどんどん低くなるので、頭をぶつけないようにひざを曲げて進んでいくと、表に出ることができました。
ちょっとほっとしてしまう。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)の横穴から出る様子
背を曲げて、ようやく出てこられました

表に出たところは平らな岩場が広がっていて、洞窟の外を、海沿いにぐるりと歩くことができました。

キリシタン洞窟(キリシタンワンド)の周りの風景
いきなり広々した平らな岩が広がってました。沖では船が待機してくれてます

横穴を出てから十字架が見える元の場所に向かって歩いていくと、岩場の上に母がいるのが見えました。おまたせー。

母を迎えに行き、岩場をゆっくりと降ります。
母に洞窟の中の様子を聞かれて説明しますが、たぶん伝わりにくいだろうなあ……。

私たちが上陸した場所に戻るタイミングで、船がちゃんと戻ってきてくれました。
次は陸から船への段差を登らねばなりません。

岩場から船への乗り込みは、かなりの高低差がありアクロバティック
最初に夫、そのあとに母を引っ張り上げてもらい(私は押し上げ役)、最後に私が乗りこみ、無事に船に戻ることができました。

ホッと一安心。
船はすぐに踵を返して、元の海路を戻っていきます。
帰りは舳先のほうに立たせてもらって、船が進む先を見ながら若松港に戻りました。

おわりに

若松港を出てから港に戻るまで、合計1時間ほどの「キリシタン洞窟」見学でした。

こんな美しい風景や海がある場所で、信仰を守るための非常に過酷な歴史があったというのが、今の時代では信じがたいものがあります。貴重なものを見学できてよかったなあ。

普通に旅行するだけではなかなか見られない信仰の場「キリシタン洞窟」、予約手配などの必要はありますが、ぜひ訪れてみてほしい場所です。

ちなみに、この日は穏やかな天気で、波も静かだったので上陸可能でしたが、天候や状況によっては上陸できないこともあるそうです。
ラッキーだったのかもしれませんね。